Sethu

Vikram, Sivakumar, Sriram, Mohan Vidya Bala Ilaiyaraja
Abitha, Bharathi 2000

   

   

   


【ストーリー】

 ヴィクラムは、大学の絶大なる影響力を持つ番長として君臨していた。その荒々しく、短気な性格は、大学の中でも、ひときわ目立っていた。しかしヴィクラムは、実は、弱きを助ける純粋な心を持っている青年であった。

 ヴィクラムの大学に新入生として、ブラーミンの娘であるアビィータが入学する。ヴィクラムは、そのアビィータを見つけ、悪戯をする。ポケーとして大人しいアビィータは、いいように弄られてしまう。ヴィクラムは、別の日に寺院にお参りをしたときに、彼女が実に歌が上手い事などを知って、彼女のことを好きになり始める。

 アビィータの家は、それ程裕福な家庭ではなかった。その家に、嫁に行っていた姉が戻ってくる。彼女は、夫婦喧嘩をして、結納金が少なかったことを罵られ、離縁を申し付けられていた。そして、子供を残して追い出されてきたのであった。再び、子供と一緒に暮らすために、彼女は、生家に戻り、仕事をしてお金を作ることにしたのであった。

 シャイでありながらも、ヴィクラムの情熱は、アビィータに対しても変わらなかった。彼は、アビィータに告白をする。内気なアビータは、その迫力の前に、その場では"Yes"を言わざるを得なかった。ヴィクラムは、大喜びするものの、アビィータには、許婚のモーハン・ヴィドヤがいた。ブラーミンのアビータは、ヴィクラムと結婚どころか、付き合うことすら、毛頭考えていなかった。その彼女の心を知って、ヴィクラムは、ショックを受ける。

 ある日、ヴィクラムの仲間が、揉め事に巻き込まれる。その揉め事は、売春宿のごろつきとのものであった。ヴィクラムは、友人たちと共に、売春宿に乗り込む。しかし、そこにはなんと、アビィータの姉が働いていた。彼女は、お金を稼ぐために、ブラーミンでありながら、売春宿で働いていたのであった。そればかりか、折り悪く、そこに、警察のがさ入れが入る。売春宿にいた客も、働いていた女性たちも、全員連行される。しかし、ヴィクラムは、アビータの姉を守るために、乗りつけたバイクで野次馬たちが見守る面前で、彼女を連れて堂々と、立ち去る。

 ヴィクラムは、彼女は、安全な場所でバイクから降ろし、立ち去る。その姿を、モーハン・ヴィドヤは、見てしまう。そして、彼は、ヴィクラムがやった勇気ある行動を知る。ヴィクラムは、そればかりでなく、彼女の夫のところにまで押しかけ、強引に縁りを戻す働きもしていたのであった。

 ヴィクラムの勇気に感激したモーハン・ヴィドヤは、アビィータにその事実を話す。そして、ヴェーダには、ブラーミンの娘はブラーミン以外の男性と結婚してはならないとは、どこにも書いていないと言い、自ら、身を引くことを伝える。それを聞いたアビィータの心は、揺れ始める。

 アビィータに対しての思いが、どうしようもなく抑えきれなくなったヴィクラムは、とうとう彼女を、自分がいつも来ている廃屋へと連れ込む。しかし、それは、レイプするためではなかった、本当の自分の心をそのまま、伝えたくて、やった行動であった。その迫力に彼女は、引いてしまうものの、とうとう彼女は、心からヴィクラムのことを愛することを決心する。

 ヴィクラムは、アビータとの幸せな日々を思い浮かべていた。しかし、そのまどろみは、つかの間であった。ヴィクラムに泥を塗られた、売春宿のごろつき達が、ヴィクラムを襲う。そして、瀕死のヴィクラムに対しとどめで、ヴィクラムの頭を石に打ち付ける。その衝撃で、ヴィクラムは、脳挫傷となり。脳の働きが破壊されてしまう。

 ヴィクラムは、病院に運ばれ一命を取りとめはするものの、回復の見込みは、ほとんどない状態であった。そして入院していた病院でも彼は、問題を起してしまい、とうとう、彼は、アーユルヴェーダ治療の施設に送り込まれることになる。その施設は、将に狂人たちの巣窟であった。そこで、ヴィクラムは、治療を受け続ける。そして、決して回復することがない見られていたヴィクラムに少しずつ、かつ劇的な変化が起こり始めるのであったが……。


【コメント】

 凄絶な作品である。あまりにも凄絶な作品である。人を愛するということは、これほどまでに、生々しい。それ以上何も言葉を加えることの出来ない傑作である。好き嫌いによる、異論はっきりと分かれるだろう。その愛するとことの深遠の深さに恐怖を覚える人達も多くいるであろう。しかし、それをも遥かに突き抜けた傑作である。

 ある意味、受け手が、今までどれほど、真摯に人を愛することと向き合ってきたのか、その問題と直面させるだけの怖さを持っている。そのためその恐怖と向き返るかどうかで、その評価は、真っ二つに分かれるだろう。しかし、作品としての完成度は、その好き嫌いを越えて、パーフェクトである。

 何よりも、この作品が初監督作品となるバーラ監督の、画面の集中力の高さは素晴らしい。ひとつひとつの『絵』は、それと言って魅力的というほどではないものの、その『絵』の動かし方、瞬間の止め方、間の取り方で、最高度の集中力を成し遂げている。

 出演者には、当時の有名どころは、一人も出ていないが、全員が、素晴らしい演技をしている。特に、この作品で一躍第一線へ踊り出たヴィクラムの、繊細かつ大胆、それでいて緻密な演技は素晴らしい。ヒロインのアビータも、役にぴったりとはまり、キャスティングが見事に成功している。

 自らの心身が、充実している状態でなければ、この作品を見るのはやめておいたほうが良い。実は、個人的には、好きな作品ではない。しかし、傑作中の傑作として賛辞されるべき作品である。



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